さて、最近のニュースでカリフォルニア州において、不法移民にも自動車運転免許証が発行される、という法案が可決されました(遅くとも2015年1月を目処に発行開始)。これはつまり、違法にアメリカに滞在している人に対しても等しく運転する権利を付与するという、なんとなく不思議な法案ではないでしょうか。
カリフォルニア州には不法移民が数多く滞在している
カリフォルニア州はメキシコに隣接している州ですので、メキシコ経由でアメリカに入国する不法移民が多く、結果としてカリフォルニア州内にも不法移民が数多く滞在しており、U.S. Department of Homeland Security(アメリカ合衆国国土安全保障省)によると、2010年時点でカリフォルニア州には約257万人の不法移民が滞在しており、アメリカ全体の実に24%に登るのでは、と考えられています。
不法移民がカリフォルニア州の経済を支えている?!
また、その様な不法移民がレストランでの下働きや、農業の現場における労働など、多くの人が進んでやりたがらない様な仕事に従事しているケースも多くあり、現実的にはそういった労働力が、カリフォルニア州で必要とされているケースもある様です。勿論、上記の他にも、不法移民も生活をしていくために、何らかの労働に従事していることが考えられます。
自動車保険に加入していない不法移民との自動車事故
ところが、カリフォルニア州の土地が広大であること、自動車が無いと生活が困難なことが多いことも考慮すると、彼らのうち多くが無免許、もしくは、偽造免許証等で運転している事が想定されます。
そうなると、事故の多いこの州で、もしそういった無免許・偽造免許証等で運転している人が事故を起こした時に、自動車保険の問題が出てきます。
つまり、被害者がアメリカに合法的に滞在している人であっても、加害者が自動車保険に入っていないがために補償が受けられない、という可能性もあったわけです。
それが今回の法案の可決によって、そういった不法移民も自動車保険への加入が可能になることが予想されています(実際に不法移民が自動車保険に加入するかどうかは別の問題です)。
また、カリフォルニア州にて自動車免許を取得する際に、不法移民に対しても適切なトレーニングを受けさせることにより、全体の事故を減らしたい、というのがカリフォルニア州における、この法案の根底にあるようです。
カリフォルニア州だけでは無い?!
さて、移民が多いカリフォルニア州でこの法律が制定されたわけですが、実はカリフォルニア州が初めて、というわけではありません。実のところ、カリフォルニア州以外でも既に10州で同等の法律が可決されており、そのうちオレゴン州とコロラド州では、通常の免許証と不法移民に対する免許証の区別がつくようになっている様です。
カリフォルニア州においては、実際に不法移民に対して発行される書類には、労働するためのステータスや社会保障等を証明するものではない、と明記されることになります。
カリフォルニア州の交通を安全にする法案
不法移民に対して免許証の発行をする、というのは、正しいことなのかどうか、という考え方もあるでしょうが、今回の法律は主に警察と保険関連のサポートであり、実際にロサンゼルスの警察も、「今回の法案は、この州の交通をより安全にするためのものである」と発表しています。やはり理由はどうであれ、事故をいかに減らすか、を念頭に置いて成立したものであり、その合理的な点をさすがアメリカ、と見るか、他にやるべきことがある、と見るか。いずれにしても、今回の法案の可決により、カリフォルニア州の事故が少しでも減ることを祈るばかりです。
日本からカリフォルニア州へビジネス立ち上げの視察に来られる方の中で、自動車を運転される方は、この様なことも知った上で運転されると、光景も変わって見えるのではないでしょうか。
参照リンク
http://www.foxnews.com/politics/2013/10/03/california-allows-illegal-immigrants-to-obtain-driver-licenses/
http://www.dhs.gov/xlibrary/assets/statistics/publications/ois_ill_pe_2010.pdf
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